水銀は古代には不老長寿に効果があると信じられて、時のお偉いさんが摂取していた。
たしかに、いかにもその他の物質と振る舞いが違うし、何かあると思ったのだろう。
気持はわからなくはない。
子供の頃とかはそんな感じですごそうだと思っていた(さすがに飲みはしないけれど)。
磁石についても、その不思議な性質についてはかなり古い記述がある。
有名なのがプラトンの著作「イオン」に登場する、「マグネシアの石」である。
「イオン」は対話形式で、プラトンの師のソクラテスが問答する様子が描かれている。
マグネシア石が鉄の指輪を牽きつけてはまたそれがほかの指輪をひきつける力を注ぎ込みそこに長い鎖を結果させるように、ムウサの女神もまた…
水崎博明, 福岡大学人文論叢/Fukuoka University Review of Literature & Humanities,38(4),1423-1435 (2007-03)
プラトンが生きたのが紀元前400年ごろ。
その頃には磁石の話は神が人々をひきつける力のたとえ話に使われている。
この辺の作品群は、紀元前1世紀ごろにプラトンの真作っぽいものをまとめたもの。
なので、仮に偽書だとしてもその頃には「磁石すげー」と言う記述があったと言うこと。
(むしろ偽書を書く人でさえ磁石に馴染んでいたのならもっと面白い気がする)
もちろん、後で書き足されたかもとか言い出すとその辺はわからないけれど。
しかし、磁性の微視的な理解は19世紀に電磁気学が登場してもなお進まない。
結局本当に正体を知るには20世紀の量子力学の登場を待つことになる。